レインウェアの防水素材の最先端どうなってんだ!?達人インタビュー
防水素材といえばゴアテックス。しかし、最近は他の防水素材も台頭してきました。ひとえに防水透湿素材といっても、すごくいろいろあるし、どれがいいのか分からない! ぶっちゃけ素材ってどうなってるの?というところを詳しい達人に聞いてみました。
インタビューしたのは、関東を中心に展開するアウトドアショップWILD1多摩ニュータウン店のウェアやシューズなどを担当している青木仁さん。
ゴアテックスレインウェアについて聞いてみました。
100%山歩き(以降 100):ゴアテックスについてまず教えてください。
青木仁さん(以降 青):ゴアテックスには、3レイヤーとか2レイヤーとかありますが、これはゴアテックスのメンブレン(防水透湿素材のフィルム)を表と裏とサンドイッチ状にしているのが3レイヤー。2レイヤーは、表だけにナイロンを張って、裏側がメンブレンむき出し、そのかわりに裏側をメッシュ素材にしたりしています。昔はそういう分厚いナイロンを張って裏メッシュの2レイヤーが多かったですね。
100:その中で、ときどき2.5層というのを見ますけど?
青:2.5層というのは、裏地を生地ではなく、コーティングしてあるものです。吹き付けてあるもの。ゴアテックスの場合パックライトシェルですね。
100:ゴアテックスといっても種類がありますよね?
青:ゴアテックスには、3種類あります。
ゴアテックス(ノーマル)・アクティブシェル・プロシェル
これは、実は素材によるわけ方ではないのです。
ゴアテックスというメンブレンは、おそらくずっと前からほとんど変わっていなくて、それを表面生地とくみあわせることによってシェル生地にして、さらにデザインによって、どのような特徴がでるのか、ということで分けています。たとえば透湿性が高いならアクティブシェル。耐久強度があればプロシェル、といった具合です。
100:ゴアテックスでいえば、今度Cニットという新しい素材がでましたけれども
青:これです。モンベルのストームクルーザー。
比べてください。去年までのモデルとCニットの新しいモデル。
100:うわ、柔らかくてしなやか。しかも薄いですね。
青:通常のゴアは、裏地がいわゆる織りの生地を貼り付けているのですが、Cニットは、クサリ状(リング状)のニットなんですね。だから、ルーペで拡大してみると、ゴアのメンブレンが見えているんですよ。なので水分を広げて吸収しやすい。
100:コロンビア社のドライQエバップというのがありますが、メカニズムがそれに似ていますね。
青:Cニットの場合は織りの生地をクサリ状のニットにすることによって、水分を拡散させるのと、肌触りや柔らかさがでていますね。
100:よく考えましたね。こんなこと。
青:Cニットは日本のゴアテックスで開発されたメイドインジャパン素材です。日本だけで発表された素材なんですよ。だから、さっきの3種類の中に、まだカテゴリー化されていない。
100:だんだん分かってきました。防水素材といっても、はりつける素材によって随分違いがありますね。
青:防水透湿素材のフィルムに張る素材によって実際の透湿性能もぜんぜん違います。同じゴアテックスでも、ナイロンの厚みとかで変わってきますね。
100:ぶっちゃけゴアテックスがいいのでしょうか?
青:それは(笑)。ノースフェイスやモンベルでも上位のものはゴアテックスですよね。あとは、パタゴニアだったらH2NOという独自の防水透湿素材1本で頑張ってきましたが、結局今はゴアテックスが採用され始めていますし。でも、例えばファイントラックの防水透湿素材は、ゴアなどのポリウレタン系ではなく、ポリカーボネイトという多孔質素材を使っていて、これなんかは、経年劣化が遅いといっています。
100:つまり長持ちする?
青:ですね。透湿性何万ミリとかいう数値の試験は各社でそれぞれですが、基本的に新品の状態のときの話でしょう?ファイントラックは(A-1法)というかなり厳しいテストも高い水準で、時間経過してもそれが損なわれないという素材なんですよ。
100:なるほど。では、撥水についてはどうですか?
青:撥水はDWRという撥水加工がありますが、どんなに強力な撥水処理をしても、ナイロンの繊維が毛羽立ったり浮いてくると、水を吸収してしまします。いくら撥水が優れていても、使っているうちに弱くなります。
100:ではどうしろと?(笑
青:やっぱり撥水に関しては、適度にメンテナンスしていくしかないですね。
100:洗濯ですか?洗剤は?
青:通常の洗剤だと発色剤などがはいっているからやらないほうが良いとメーカーさんは言っています。まぁエマールとかで洗濯したこともありますが、できれば専用の洗剤がいいですね。そのあとで、撥水剤で撥水加工します。
100:そのレインウェアを洗うってどのくらいの頻度でやればいいんでしょうか?毎回?
青:いやぁ、毎回はなかなかですけど(笑
100:やっぱりドロとかの汚れで透湿性とか撥水性が損なわれますよね?
青:それもありますが、あとは、皮脂ですね。人の油。
100:皮脂!?
青:そう。内側の生地に皮脂がはりついて透湿性がなくなります。
100:ええ!それは知りませんでした。
青:だから洗うときはしっかり洗います。ぬるま湯とかお湯のほうがよく落ちますね。そして、すすぎをしっかりやります。
100:ニックワックスがやっぱりいいですか?
青:そうですね。私の使っている感じでは、グランジャーズがよく落ちます。界面活性剤が多いですので。その後にニックワックスで撥水という組み合わせ。
100:青木さん的には、どのレインウェアが今年のおすすめですか?
青:やっぱりモンベルのストームクルーザーですね。Cニットを使っていて、表面のナイロンがたったの20デニールです。袖のところもほら、しっかり防水処理しています。縫い目のシーリングも従来より細くして軽量化させてますね。
そして、モンベルもとうとうフードの収納システムを止めましたね。これって日本人の感覚なんですよね。フードがたためると便利って思うの。でも、雨の降るときにフードたたむ必要があるのか(笑) フードの構造もヘルメットに合わせたりすると、収納できなくなるし、重量も重くなります。
100:なるほど。着てみたらすごくいい感じですね。肌触りもよいし軽い。フードもフィットしてますね。
青:何年もこの業界にいると、どうしてもブランドで決め付けがちになるんですが、最近は、そのウェアを見るときに、あえてロゴを隠してみるようにしています。モンベルだから、マムートだからとかいう思いを消して、そのジャケットだけをみて判断するというか。
100:なるほど!それすごいかもです…インタビューありがとうございました!
インタビューゲスト
青木 仁
WILD1ソフト担当。勤続年数12年。
大学時代から登山をはじめ、裏山からアルプスまで登る。
ロッククライミング暦は15年と長いが、永遠の5.10クライマー
素材オタクの2児の父
アウトドアショップ ワイルド1